[研究の目的]災害時に高齢者が自らの命を自分で守り避難することができるように、災害時に向けた知識と体力を身につけられるようなモデル的教育プログラムを策定することである。 [FIMを用いた日常生活自立度評価]FIMは、運動系の13項目と認知系の5項目で構成されるADL評価法である。完全自立から全介助までの7点法で算出され、得点が高いほど自立度が高いと評価される。 [研究内容]平成19年度から21年度に実施したFIMの評価分析(合計5地区 244名)の結果から災害時に向けたモデル的教育プログラム(平成21年度中に策定できず)の策定 [訪問調査]行政と民生委員の協力を得て、地区在住の高齢者(65歳以上)を対象に調査目的と内容を口頭と文章にて十分に説明を行い調査協力の承諾を得られた方を選定した。調査目的と内容の説明を受け訪問面接について熟知した調査員7名(看護学生と地域看護領域の教員)が各戸訪問し、FIMの評価を実施した。 [倫理的配慮]調査時に身体的な配慮に努め、調査は強制でなく拒否や中断することが可能であること、調査で得た情報は研究以外には使用しないことなどを伝えた。分析後、調査対象者のデータは全て破棄した。 [結果]地区各々で分析結果は異なったが、「階段移動」が共通して評価の低い項目であった。次に移乗や移動など主に下肢筋力を使用する動作の評価が低いことが明らかとなった。 [本研究の意義・重要性]過去に発生した多くの震災では、災害直後の逃げ遅れや避難時の転倒・怪我により多くの高齢者の犠牲者が発生した。本研究における結果から主に下肢筋力を使用する動作において比較的評価が低いことが明らかとなり、実際の災害時にも逃げ遅れによる犠牲者が多く出ることが予測される。よって災害時に多くの高齢者が自らの命を自分で守り避難することができるためには、主に下肢筋力に重視した健康教育を策定することが必要である。
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