本研究の目的は、運動介入プログラムへの継続意欲に関連する要因を練りこんだ、地域住民・地域医療・地域保健・地域研究機関の連携に基づく地域ケアシステムの構築とその効果を心理・生物・行動学的に検証し、モデル化することである。平成22年度は、対象地域の高齢者3グループ、約100名に対し、昨年度開発した介護予防のための高齢者用運動プログラムを、地域保健師および地域の自主運動グループ(ボランティア)と共に実施中であり、定期的な評価を行っている。運動介入は月2回開催される老人会にて定期的に実施し、約1年間継続しており、評価は半年に1度実施しでいる。また、地域のボランティアとの協力により、対象である高齢者の多くが運動プログラムを修得し、安全に実施できている。運動介入の効果として、日頃から運動を実施している運動群は、運動を行っていない非運動群に比べて、体力指標である歩行力および握力が強く、心理指標である「心の健康」「QOL」「主観的健康感」が高く、健康習慣得点が高かった。さらに、運動群は非運動群よりも、将来的な血管系トラブルを予測する指標である高感度CRPが低い傾向にあった。対象者は、地域に在住する平均年齢約80歳の後期高齢者であり、高齢であっても運動介入によって、体力、精神的健康、健康習慣が維持および向上し、将来的な血管系トラブルを予防する可能性があることが明らかとなった。しかし、対象者のうち、老人会以外の自宅で日々の運動を行っているものが半数以下であるため、今後は、老人会にて運動介入を継続してゆくだけでなく、自宅における日々の運動を推進するよう働きかける必要がある。また、引き続き運動プログラムの評価およびケアシステムの評価を行ってゆく。
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