尿失禁は、高齢者のQOL (Quality of life)および健康度自己評価を著しく低下させる主要な原因の一つである。しかしながら、尿失禁を有する高齢者の詳細な実態や看護介入の効果の検討については、未だ十分明らかにされていない。そこで、在宅で暮らす健康な高齢者と高齢者施設に入所している高齢者を対象に、尿失禁と生活行動の実態を明らかにすること、および、温罨法での高齢者の尿失禁分類ごとの改善方法の確立が本研究によって知見となることを臨む。 21年度は、温罨法による看護介入に先立ち、過活動膀胱の生理学的メカニズムを検証することが最重要であることから、健康女性(20歳から40歳)12名を被験者とし、排尿機能、特に膀胱収縮能についての基礎的データの集積と解析と集積を実施した。排尿機能としてよく知られているのは、尿道カテーテルを用いた膀胱内圧の測定である。しかしながら、尿道カテーテルを挿入することによる侵襲性があるため、過活動性膀胱の評価に対象となる患者にとっては好ましくない。そこで、非侵襲的手法を用いた調査を実施した。この調査から、健康女性(尿失禁の自覚症状なし)の自然排尿直後においても膀胱内に尿の貯留があること、排尿時の膀胱平滑筋の収縮、特に膀胱頸部の収縮は膀胱内尿量がわずかになったときの単位時間当たりの尿排出速度(ml/s)は残尿の有無にかかわらず一定の速度である可能性が得られた。現在、データ解析中であり、追加調査を計画している。 また、ライフサイクルの多様な在宅高齢者と生活行動の均一性の高い施設高齢者の尿失禁と生活行動との関連性の実態を疫学調査にむけて、現在、高齢者団体等にアンケート参加協力を得るための交渉を行っている。
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