尿失禁を有する高齢者の詳細な実態や看護介入の効果の検討について、本年度の研究計画を以下の2つとした。 (1)若年女性(20歳から35歳)及び高齢女性の過活動性膀胱の生理学的メカニズムの検証を実施する。排尿反射、特に膀胱収縮能についての基礎的データの解析と集積を行う。 (2)若年女性および高齢女性を対象に下腹部温罨法の看護介入による尿失禁の改善の検証を行う。 結果は、若年女性(22.4±3歳、BMI:22.4±6kg/m^2、n=12)の尿意時膀胱容量(ml)は327.1±119.8、最大尿意時膀胱容量は575.5±158.4、尿意時排尿量(ml)は311.6±122.2、最大尿意時排尿量(ml)は556.4±141.1、尿排出時間(sec)は19.0±9.7、最大尿意時尿排出時間(sec)は42.8±24.1、尿意時平均尿流率(ml/s)は18.2±6.4、最大尿意時平均尿流率(ml/s)は16.1±8.0、尿意時推定残尿量(ml)は15.5±43.0、最大尿意時推定残尿量(ml)は19.1±58.5であった。高齢女性(65.3±3歳、BMI:24.0±2kg/m^2、n=11)の尿意時膀胱容量(ml)は312.4±124.5、最大尿意時膀胱容量は480.1±144.2、尿意時排尿量(ml)は223.2±114.6、最大尿意時排尿量(ml)は366.2±144.1、尿排出時間(sec)は19.9±6.3、最大尿意時尿排出時間(sec)は28.3±15.6、尿意時平均尿流率(ml/s)は11.51±5.6、最大尿意時平均尿流率(ml/s)は15.6±7.7、尿意時推定残尿量(ml)は69±36、最大尿意時推定残尿量(ml)は107±91であった。若年および高齢女性に泌尿器疾患を罹患する者はいなかった。過活動膀胱である高齢者は2名であった。 若年女性と高齢女性の排尿機能を比較検討したところ、最大尿意時排尿量、尿意時平均尿流率及び最大尿意時推定残尿量において有意な差が認められた(有意水準0.05)。高齢者の排尿機能は、若年女性に比べ膀胱での最大蓄尿量が少ないことから膀胱平滑筋の伸展の減弱が考えられ、また平均尿流率が小さいことから排尿時の膀胱収縮力が加齢によって減弱していることが考えられる。膀胱の収縮力の低下により、残尿量がより多く残る状態に至ると考えられる。 さらに、温罨法を用いた看護介入による排尿機能は、非介入時に比べ、若年女性と高齢女性ともに尿意時間の延長及び尿意時膀胱容量の増加の傾向があることが明らかになってきている。温罨法による排尿機能
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