研究課題/領域番号 |
21792310
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研究機関 | 九州大学 |
研究代表者 |
寺岡 佐和 九州大学, 大学院・医学研究院, 講師 (60325165)
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キーワード | 認知症 / 園芸療法 / 高齢者 / 三次予防 |
研究概要 |
【目的】高齢者の認知症の重症化予防、いわゆる三次予防を目指した、総合的なケアとしての園芸療法のプログラム内容について検討することである。 【方法】前年度と同じ特別養護老人ホームに入所中の、同一の認知症高齢者を対象に、アクティビティの一環として、定期的に約60分の園芸療法を行った。主な活動内容は、種や苗、球根を用いた野菜や花の植え付け、植物の手入れや収穫、生け花やフラワーアレンジメント、活動に関する振り返りや話し合いなどであった。園芸療法終了後には毎回、参加した施設職員と研究者でカンファレンスを設定し、園芸療法時の各対象者の様子について情報交換したり、適宜、対象者の最近の生活状況を確認し、今後の園芸療法での関わり方について話し合ったりした。また、今年度もファイブ・コグ検査を実施し、認知機能の状況について把握した。 【結果】研究協力の同意が得られた者は11名(男性1名、女性10名)、平均年齢は88.4歳であった。対象者の認知症高齢者の日常生活自立度は1~IIIb、障害老人の日常生活自立度はA1~B2で、農業等の経験者は11名中7名であった。ファイブ・コグ検査の結果、対象者によって認知機能の状況は異なっていたが、園芸療法時の言動からは、ファイブ・コグ検査では得られなかった認知機能の状況を確認することができた。また、対象者同士が会話する場面を頻回に観察したほか、植物の映像を取り入れた活動に関する振り返りでは、夏野菜の映像に対する良好な反応を確認した。 【考察】園芸活動を通し、定期的に顔を合わせることで、対象者向士に顔見知りという認識が生じたのではないかと考えた。また前年度、夏野菜の苗を植えるプログラムは、全対象者に精神的安定をもたらすことを確認したが、今年度の研究から、農業等の経験の有無とは関係なく、夏野菜が対象者の生活において馴染み深かったことが、精神的安定に作用したのではないかと考えた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
園芸療法を定期的に実施し、園芸療法参加時の対象者の様子や日常生活の中での様子について、質的に記録し、分析した。また、定期的にファイブ・コグ検査を実施することで、認知機能の変化の仕方を長期的に評価することができた。
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今後の研究の推進方策 |
園芸療法を継続実施し、データをさらに蓄積することで、対象の特性に応じた園芸療法のプログラム内容について精練したいと考える。 また、ファイブ・コグ検査の結果からは把握することができなかった認知機能が、園芸療法時には対象者の言動を観察することにより確認することができたことから、認知症高齢者の認知機能の状況を、より適切に評価していく方法について検討したいと考える。
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