研究概要 |
本年度は、国内外の高齢者施設における認知症高齢者の複数回転倒対策とその効果に関する現状分析を目的に行った。 1. 複数回転倒に関する文献レビュー 複数回転倒に対応する英語表現frequent fall, recurrent fall, multiple fall, repeat fallの4語を用いて検索、レビュー論文5編と予防策に焦点をあてた論文4編を検討した。その結果、recurrent fallという用語を用いた研究が圧倒的に多く、定義は2回以上/年の転倒であったが、統一見解は得られていないと指摘する論文もあった。介入研究であっても転倒回数のみを報告し、転倒者数について報告していない論文もあり、研究デザインについて、より厳密であるべきだという主張が多かった。介入プログラムとしては、単一のものよりも複合的なものが複数回転倒のリスク管理には有効であり、外部環境の整備、高齢者個人に合わせたテーラーメイドの予防策、頭部保護、ヒッププロテクタなどの防具、転倒予防に関する教育プログラムなどが挙げられていたが、センサーや人工知能の利用による報告は皆無であった。複数回転倒について、運動が有効であるという統一見解はなかった。 2. 家族や介護者に対するプログラム 転倒に関するの文献では転倒予防プログラムの家族や介護者に対する影響は未知の分野であるという指摘がある。家族看護の分野では、管理者がリスクマネジメントに家族看護の考え方を応用すべきだという指摘は出ているが、具現化した報告はなかった。 今年度は、プログラム作成まではできなかったが、上記の結果をふまえ、ベースライン調査項目を選定し、最終年度の介入に向けて、家族・介護者へのリスクマネジメントに関するプログラムを作成する。
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