本年度は、家族・介護者へのリスクマネジメントに関するプログラム作成および、介入調査のためのベースライン調査を行った。特別養護老人ホーム9施設、老人保健施設2施設の協力を得て、総計1032人の入居者を対象とし、平成22年12月~2月の3カ月間、入居者の基本情報、予防対策と転倒者の情報を調査した。対象者のうち242人(23%)は男性、平均年齢は84歳であり、要介護4と5は60%であった。認知症の診断を受けている人は70%であり、併存症は脳血管疾患44%、高血圧が43%であった。転倒予防対策がなかった人は64%であり、その80%は転倒・転落の危険なしと判断されていた。予防策では、低床ベッドの利用(33%)、車イス・歩行器の使用(57%)、センサー類(25%)、頻回に巡視(47%)、日中離床の促し(41%)、転倒リスクについての家族への説明(63%)、転倒予防ケアプランの作成(47%)などが主たるものであった。転倒報告数は、総数339件、男性が30%、平均年齢は84歳であった。転倒の現場を目撃されたのは19%、歩行中や椅子からの移動中であった。目撃されなかった80%のうち半数以上がしゃがむ、しりもち・ひざをつく、床に倒れるなどの状態で発見された。転倒者のうち24%に何らかの傷害があり、上肢の骨折3件、下肢の骨折11件、継続した加療や入院が必要だったのは14件であり、227件(67%)は受診せず、医務室の看護師が対応していた。 転倒者を同定した上での複数回転倒率および有効な予防対策について、これから詳細を分析し、リスクマネジメントマニュアルを作成する。
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