研究課題
ラオスの農村地域において、腸管寄生虫症(STH)に対する(1)現地で効果的な駆虫方法(2)STH感染と人的・物的因子との関連を明らかにした上で、(3)再感染対策としての健康教育の波及効果を明らかにすることを、本研究の全体の目的としている。目的(1)はすでに終了しており、最終年にあたる本年度は、目的(2)の一部として、住民の寄生虫症感染に関する強化因子・阻害因子の抽出と、目的(3)に関連し、健康教育を効果的に進めるため小学校を拠点にした介入研究を行った。(2)は、STH対策についてラオ族、モン族の男女各1グループ(6名)計4グループ(24名)のフォーカスグループインタビューを行った。ラオ族では《寄生虫症感染・回復の体験》《寄生虫症への再認識》《感染の告知》《社会的経済的事情》《健康への希求》《親としての責任感》、モン族では《健康への希求》《家族のサポート》《社会的経済的事情》《感染の恐怖の自覚》であった。阻害要因として両民族で共通していたものは《予防意識と現実生活との葛藤》、《予防への無力感》、《地域文化、民間療法の尊重》、《無症候性感染》であり、その他、モン族のみ《学習機会・情報の不足》、《基礎学力の不足》が抽出された。(3)は、STHに関する知識、態度、実施と生活環境など、合計32項目の質問紙を用いた聞き取り調査を行った。その後、ストーリーブックを用いた介入を行い、同様の質問紙を用いた調査を行い、介入前後の比較を行った。ストーリーブックを用いた健康教育はラオ族の知識、態度は改善したが、実施は改善しなかった。モン族では態度、実施は改善したが、知識は改善しなかった。STHの予防策は日常生活習慣に根ざしており、これまで日常的に行っていた行動・ライフスタイルの変化を可能にする具体的な方法を教授できる健康教育の実施が必要である。
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日本ヒューマンケア科学学会誌
巻: Vol.5, No.1 ページ: 36-45