本年度は、高齢者が療養する病棟における看護師のインタープロフェッショナルワークコンピテンシーをインタビュー調査によって検討した。高齢者が療養する病棟で働く看護師で、多職種チームでの実践を行っている者かつ自分の実践について語れる者(5名)を対象に、半構造化面接法によって、対象者の実践について語ってもらった。データ収集期間は、2010年9月~10月である。分析方法は、面接内容を録音し逐語録とした。面接時間は、52分から80分であった。逐語録から「多職種者とチームとして患者をケアする行動」を抽出し、その内容を知識、技術、態度の視点から整理する内容分析を行った。 対象者がチームメンバーとして認識している他職種は、リハビリテーションスタッフ(PT、OT、ST)、栄養士、介護職者、医師は5名とも共通していた。他、連携室、医療ソーシャルワーカー、ケアマネジャーが挙げられた。分析の結果、高齢者が療養する病床における多職種者とチームとして患者をケアするための看護師の行動として、【他職種者とのコミュニケーション】【計画実行のための柔軟な対応】【役割の明確化】【チームメンバーとしての役割遂行】【他職種者と共に学ぶ】【情緒的サポート】の6カテゴリが明らかになった。 IPWに関する先行文献と比較して、高齢者が療養する病棟の看護師の行動には、情緒的サポートが特徴としてみられた。この背景には、スタッフの高齢者理解不足、患者家族の高齢者理解不足という高齢者ケアの現場が抱える課題があると考える。また、柔軟な対応というカテゴリには、患者の24時間の生活を長期的に支える場としての特徴があると考える。今回得られた知見を基にコンピテンシーリストを作成することが今後の課題である。
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