本研究の目的は、都市部在住高齢者の運動習慣の獲得に影響する要因について明らかにすることである。平成22年度は「転倒骨折予防実践講座(以下、実践講座とする)」を開催し、体操や転倒予防に関する講話等から構成された包括的なプログラムを提供するとともに、日々の運動状況を記録するための運動カレンダーを配布することにより、運動習慣の獲得に向けた動機づけを都市部在住高齢者に対して行った。加えて、運動カレンダーの記載内容を追跡調査することにより、講座開催期間における参加者の運動の実態について検討した。 平成21・22年度に開催した実践講座の参加者は52名であった。このうち、実践講座の開始初日から4週間にわたる運動カレンダーの追跡調査を実施できたのは42名であった。その内訳は、男性8名(19.0%)、女性34名(81.0%)で、平均年齢は75.8歳±6.5歳であった。参加者の運動実施状況について調べたところ、講座開始初日から4週間にわたり毎日運動を実施できた者は7名(16.7%)であった。また、1週間に2日以上の意図的な身体活動を4週間継続して行うことができた者(以下、運動継続者とする)は42名中25名(59.5%)であり、その内訳をみると65~74歳の者が14名(56.0%)、75歳以上の者が11名(44.0%)を占めていた。 平成19年度国民健康栄養調査では、1年間にわたり1回30分以上の運動を週2日以上継続して実施している者の割合について、65~74歳では42.6%、75歳以上は28.5%と報告している。本研究における追跡期間は前述の調査よりも短かったものの、運動継続者に関する高い割合が示された。今後は、他の先行研究との比較等を行いながら都市部在住高齢者の運動の実態の詳細をつかんでいくようにする。
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