研究概要 |
【目的】本研究の目的は,「転倒骨折予防実践講座(以下,講座)」に参加した高齢者の運動状況を前向きに調査し,運動の習慣化に影響を及ぼす要因を明らかにするとともに,運動の習慣化と転倒との関連について検討することである,【方法】(1)対象者と講座の開催方法:65歳以上の都市部在住高齢者を対象として週1回120分の講座を4週連続で実施し,12週後,54週後の2回のフォローアップを含め計6回開催した.毎回の講座では健康教育等に加え,30~40分の運動プログラムを提供した.(2)調査の内容と方法:講座開始前,12週後に質問紙調査と計測を行い,対象者の運動状況等を把握した.(3)分析方法:講座開始前と12週後における歩行,ストレッチ,筋力トレーニングの3項目(以下,運動3項目)を習慣的に行う者の割合の比較にはマクネマー検定を,12週後に運動3項目を習慣的に行う者の割合と転倒経験や転倒恐怖感を持つこととの関連の検討には,Fisherの直接法を用いた.【結果】本研究の対象となった高齢者64名の平均年齢は75.7±6.3歳で,女性が55名(85.9%)を占めた.運動3項目を習慣的に行う者の割合は,歩行が講座開始前34名(54.0%),12週後41名(66.1%),ストレッチが講座開始前11名(17.5%),12週後23名(35.9%)で,講座開始前に比べて12週後に先の2項目を習慣的に行う者の割合が有意に高かった.しかし,12週後における運動3項目を習慣的に行う者の割合と転倒の経験や転倒恐怖感を持つこととの有意な関連は認められなかった.【考察】本研究において,運動を習慣的に行うことと転倒の経験や転倒恐怖感を持つこととの有意な関連は認められなかったが,講座開始前に比べて12週後には運動を習慣的に行う者の割合が有意に増していた.したがって,運動を習慣的に行うことへの影響要因については引き続き検討していく必要があると考えられた.
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