労働安全衛生法に定める定期健康診断に合わせて抑うつ質問票を用いた「こころの健康診断」を実施した。身体の健康管理と心の健康管理を一元化し、企業の衛生管理者、地域産業保健推進センター・地域産業保健センター・保健所等の各関係機関からの助言を交えながら、事業場全体の職場環境改善などへ働きかけた。これらの一連の管理対応システムの構築を通じて、自殺防止のための初期の「仕組みづくり」を進めたものである。今後も事業所が主体となって継続的な管理運営を実施するよるための体制づくりに貢献した。 職域集団を対象に、定期健康診断時に自殺のリスクが高いうつ病を早期にスクリーニングし、その事後措置としてアフターフォローを施すことで、介入前後の健康度に優位な相関を確認することができた。介入を進める中で、研究対象の不調の原因が、業務上外に及ぶこともあり、事業主の責任として進められる以上、労働者の私的なプライバシー保護に関する課題が、運用を進める上では課題になると考えられた。 また当該年度においては、従来の臨床上に見られるうつ病所見ではなく、社会適応性に問題を抱える就労者の存在も否めないことより、拡張型自閉症気質に関する調査も合わせて盛り込んだ。こちらの調査については、未だ確立されたものではないが、抑うつ度に応じた健康管理対応のみならず、各個々人の社会適応レベルに合わせて職務選択等、今後の発展的な研究に繋げていくための基礎資料とした。
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