本研究の目的は、ペルソナ手法というWebサイト作成領域の手法を看取りケア教育に応用し、介護施設における看取りケア教育の実践と評価を通じて改良を重ね、看取りケア教育の一つの手法として提案することである。 2009年度の計画は、看取りケアの高齢者ペルソナおよび施設スタッフペルソナの作成であった。計画は介護老人保健施設と特別養護老人ホームの2施設を予定していたが計画を介護老人保健施設だけに縮小して進めた。ペルソナ作成のプロセスである定性調査として、介護老人保健施設の看護師にインタビューを行い介護老人保健施設における看取りケアの現状および課題などを聴取した。その結果から、ペルソナ作成の順序については施設スタッフのペルソナ作成を優先することにした。定性調査結果をもとにアンケート用紙を作成し定量調査を実施した。対象はA県内の全介護老人保健施設であり、調査方法は電話によるアンケート調査とした。この結果から、看取りケアの一般的な概況は、施設環境としては個室入所者が23%、複数部屋の人を個室へ移動させた40%、複数部屋のままで看取る35%といった状況であった。看取りケアの同意は、本人と家族に取っているケースが34.2%、家族のみで本人には聞かないケースが65.8%であった。看取りケアを実施する上での悩みや困難点については、看護師に関するものとして、老衰の判断の難しさや適切な医療行為の度合いなど臨床判断を要する悩みが最も多く聞かれた。次に、施設環境の問題として個室がないことが挙がっていた。また、看取りケアの現場では家族の意見が変化してしまう事がスタッフの悩みとなっていた。これらの結果から、施設スタッフが看取りケアにおいてどのような悩みや問題点を抱えているのかが少し明らかになった。現在の看取りケア環境において働くこれらの悩みをもっペルソナを作成していくことになる。
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