本研究の目的は、うつ病の再発防止に向けて「状況構成(Tellenbach)」の変化の特徴を踏まえた看護面接の方法を検討することである。 今年度は、これまでに得たうつ病回復者9名の語りを、状況構成の変化という観点から分析し、再発防止に向けた看護面接の指標を抽出した。主な指標は以下である。 1. 生活の再構築を図ることを念頭におきながら対象者の「状況構成」を把握すること。 2. 何らかの役割と一体化しやすい傾向を抱えていることを念頭におきながら生活そのものを見直し、身体性の回復に焦点をあてて関わること。 3. 身体を含む自己の回復が図られているかを見極めた上で、対象者の語りの中に、自己を客観視する視点が挿入されているのかに着目すること。その上で、対象者自ら生活を再構築できるよう援助するために、彼らの鏡像として内省を促す機会を設けたり、多様な価値観に触れる機会を提供し、彼らの自己洞察を促すよう関わること。 4. 心的エネルギーが充満し再び元の生活に戻りつつある場合、過去と現在の自己の振る舞い方を見直してもらうような声かけを行ったり、内省を促すよう関わること。 5. 発病時(仕事をしていない自己から離れがたい時期など)は、自己の存在を揺るがしかねない危機的状況にあること理解した上で、彼らに良き受け止め手としての他者の存在の有無を把握すること。万が一、受け止め手が不在である場合は、そこを補う他者や場所が必要であることを考慮し、話を聞く時間を十分に取るよう考慮すること。 平成22年度は、退院が決まったうつ病患者5名に、以上の指標に沿った看護面接を実施(2年間)し、新たに発見される指標の有無の確認や修正を行う予定である。
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