本研究の全体構想は、認知症高齢者が自身の課題解決にかかわる意思決定の場に、現実的な形で参与できるための支援方法を確立することである。そのための第一段階として、本研究では、認知症高齢者の意思決定能力がどのように保持されているのかを、影響する要因とともに明らかにすることを目的としている。 平成21年度は、本研究期間全体にかかる準備を整えるために、(1)文献レビュー、(2)調査協力員の確保・訓練、(3)調査フィールドの確保・調整の3点を実施した。(1)過去5年分の文献レビューからは、海外では、意思決定能力を評価する研究をはじめ、当事者が決定に参加したがっている状況、終末期ケアの選択に関する家族や代理意思決定者の考え、能力判定において医療関係者が抱く偏見などが報告されていたものの、国内の研究は未だ少なく、認知症の人を直接の対象者としたものは見当たらなかった。(2)調査協力員を募り、本研究の全体構想と今年度の目標を伝えたうえで、調査方法を説明した。面接方法とデータ管理の統一を図るために、デモンストレーションした後で、実際に高齢者を相手に面接を経験してもらって振り返りを行った。(3)調査フィールドとは、調査スケジュールおよび対象者の選定と研究協力への同意手続きに関して検討・調整を行った。
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