本研究の目的は、地域在住の75歳以上高齢者(後期高齢者)を対象とし、介護予防・疾病予防を目標とした、健全な食生活に関するヘルスリテラシーの向上にむけた効果的な介入方法を検討することである。平成21年度には、ベースライン調査の実施を行い、ヘルスリテラシーならびに食品摂取の多様性に関するデータの収集ならびに関連要因の分析を行った。本年度は、ベースライン調査参加者678名のうち食事に介助を要しない、調査の同意が得られた547名を無作為に3群に分け介入を実施した。 介入方法は、わが国が推奨する食生活指針をもとに作成した教材を使用し、1)図を用いた教材を自宅に郵送し、内容を「読んで学習する」群、2)12~14フォントの文字を用いた教材を読み、クイズ形式で内容を「書いて学習する」群、3)公民館において教育内容を「聞いて学習する」群である。介入における効果の検証は、介入1か月後に自記式質問紙を用いて食生活指針に関する知識、態度、実践ならびに食品摂取の多様性について、介入群別の割合の差異の検定を行った。分析対象者は、返信のあった506名である。食生活に関する知識、態度、実践におけるすべての項目で、「聞いて学習する群」の得点が最も高く、態度・実践に関しては、統計学的有意差がみられた。食品摂取の多様性については、介入群別における差異はなかったが、「書いて学習する群」と「聞いて学習する群」においては、介入前と比較し、有意に介入後に多様な食品を摂取していた。本研究結果より、後期高齢者のヘルスリテラシーを向上するには、地域において健康教室への参加が最も効果的であることが示唆された。なお健全な食生活推進を継続的に図るため、結果内容をリーフレットならびにポスターにまとめ、研究対象者ならびに地域の保健・福祉関係者へ配布し、研究成果物として還元した。
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