本研究の目的は、医療機関において自殺が起きた場合のポストベンションの開発を目的に研究を実施した。文献検討や遺族支援研究から、患者の自殺を心理的な影響がある視点のみならず、看護師自身の看護の仕事を考える肯定的側面からもインタビューを行なう必要性があり、質問項目に組み入れた。質問項目は、基本的属性、自殺の遭遇状況、仕事や仕事以外への影響、サポート内容、振り返りの機会と受け止め方、看護人生への影響や自殺予防に対する内容で構成した。 精神科に勤務する看護師にインタビューを行ない、質的に分析を実施した。看護師は、自殺の第一発見者、または同僚が発見を行なった第二発見者であった。患者の自殺を経験した看護師は、患者の行動の意味を考え続けるきっかけになったり、死にたい気持ちを持つ患者の看護を考え続けることにつながったものがいた。研究協力者の中には、患者の死を体験を、語った経験が少ない者もおり、インタビューが振り返りを行なう機会になっていた。 患者の自殺を体験したものには、振り返りを積極的に行ないたい気持ちと行なうことの不安が語られていた。振り返りを行なう場合には、このような看護師の心理的な状況に配慮することが必要であり、自殺を体験した看護師の心理的な影響について、共通認識を医療関係者が持つことが大切である。また振り返りを行なう際には、看護師に対して参加の意思を確認し、尊重されていている場合と自殺が起きてからの期間が短く参加しないことが進められた場合があった。研究協力者は、前述の振り返る不安はあるものの、次の患者に活かしたい気持ちをもっており、振り返りの時期を検討するとともに、当事者の経験を活かすポストベンションの内容が求められていた。自殺を体験した看護師への心理的影響に対する配慮とともに、次の自殺を予防する点からも当事者の意見を踏まえられるポストベンションの方法があることが明らかとなった。
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