研究概要 |
【目的および方法】せん妄を発症した患者の家族の体験に基づいた家族看護のガイドラインを作成することを目的とし、2009年11月~2010年7月にA大学病院に入院したせん妄と診断された患者の家族18名に対し面接調査を行い、分析・考察した。なお、本研究は所属する大学の倫理委員会の承認を得て実施した。 【結果】研究参加者は、術後せん妄をきたした患者の家族9名、終末期せん妄を生じたがん患者の家族9名であった。家族の年齢は30~70歳代、患者との続柄は、配偶者が7名、子どもが6名、他に親、兄弟、嫁、義妹であった。せん妄の期間は1週間~2カ月であった。術後せん妄をきたした患者の家族では《術前に受けた説明により納得しようとする》一方で、《精神病や認知症になったのではないか》(症状が遷延した場合や終末期せん妄も同じ)という不安を抱いていた。また、一定期間を経ても改善を認めない患者の家族では《見通しのつかない不安と疲労》とともに、《医療者に対する申し訳なさと怒り》、また《患者に対する不憫さ》を感じていた。終末期せん妄と診断された患者の家族は、その姿から近い死を意識し《元気だった頃の患者との遠ざかり》を経験していた。また、家族は当初《患者の幻覚・妄想に戸惑う》が,次第に《妄想の世界に患者の気がかりや安寧があることを知り》、ときに《患者の妄想の世界に入り対応》していた。この過程のなかで《本来の患者に変わりはない》という確信をもち、ケアを続ける参加者がいる一方で《変わっていく患者をみるのがつらい》と身を引く者もいた。また、身体拘束は《仕方ないとわかっていても縛られる患者をみていられない》という複雑な思いをもたらしていた。 【考察】家族の体験にはプロセスがあり、また術後せん妄、遷延する場合、終末期せん妄により体験が一部異なることが明らかになった。今後、体験のプロセスやせん妄の多様性に即した家族ケアを考案していく必要がある。
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