本研究は、質の高い産業看護ケアを実践するために、産業看護ケアを評価する評価ツールの開発とそのツールを活用した評価-改善のサイクルが効果的に稼動する評価システムの構築を全体構想としている。今回は、ドナベディアンモデルの質評価の枠組みを用い、構造、過程、結果の3つの側面から産業看護ケアを評価する評価指標を開発し、広く活用できるように標準化することを目的とする。本研究の最大の特色は、実際に現場で活躍している産業看護実務者とのアクション・リサーチにより得られた当事者のニーズを基本としていくことである。 産業看護ケアの構造化のための文献レビューや産業看護職、産業看護ケアの対象者である事業主・労働者へのインタビュー調査の結果、産業看護職への期待、必要としているサポートが明らかとなった。これらのインタビュー結果をもとに、インタビュー対象者と研究者が参加するグループディスカッションを3回開催し、ドナベディアンモデルの質評価の枠組みを用い、構造・過程・結果の3つの側面から産業看護ケアの評価指標の分類、整理を試みた。3つの側面の具体的な内容として、1)質の高い産業看護ケアを提供する場を表す「構造指標」、2)質の高い看護ケアを提供していることを示す「過程指標」、3)質の高い看護ケアの結果として対象に現れる「結果指標」に関する指標項目が挙げられた。 来年度は引き続き、グループディスカッションによる産業看護ケアを評価する指標項目の検討と実際の産業現場にて産業看護ケア評価ツールを活用したケア評価を実施する予定である。
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