わが国で行われている訪問看護師による遺族訪問は、遺族の気持ちに区切りをつけて新たな生活に向かわせるなどの効果があり、心の整理を促す重要な役割を果たしている。こうした役割を効果的に果たすための具体的な方法を検討するため、遺族訪問時の状況と遺族訪問についての思いを明らかにすることを目的として、15名の遺族に半構成的面接を行った。訪問時期に着目して得られたデータを質的帰納的に分析し、以下の結果を得、第17回日本在宅ケア学会学術集会において学会発表を行い、成果を公表した。 1.死別後1ヶ月以内の早い時期における遺族の状況として、【忙しさ】と【健康状態の悪化】があった。この時期に遺族訪問を受けることで、遺族は、一刻も早い故人へのお参りやねぎらいなどの気遣いに対する【訪問看護師への信頼と感謝】と、介護中に使用していた物品の返却・寄贈やお世話になった気持ちの伝達による【気がかりが解消された安堵感】を感じていた。 2.四十九日ころは、事務的な手続きや追善法要などを済ませ状況が【ひと段落】するとともに、体調や心境、家族内の役割などに【変化の兆し】が表れ始めていた。このような時期に遺族訪問を受けることは、遺族にとって訪問看護師とゆっくりと語り合うことができ、【癒し】となっていた。 遺族の状況は死別後の時期によって異なっており、こうした状況の違いに伴い遺族訪問に対する思いも異なることが明らかとなった。どの時期における遺族訪問でも遺族の肯定的な思いが引き出されていたが、気持ちに区切りをつけて新たな生活に向かわせるきっかけとなる思いは個々によって異なると考えられるため、一人一人の状況や性格などに応じて訪問時期を選択して遺族訪問を行うことが、心の整理を促す役割を効果的に果たすことにつながると考えられた。
|