研究概要 |
平成21年度は肝臓実質標的型MENDの構築を目標に研究を進めた。肝臓におけるルシフェラーゼ遺伝子発現活性を指標にしてMENDの最適化を検討した。エンドソーム脱出素子であるGALAを修飾したMENDでは約10倍遺伝子発現活性が上昇したため、細胞内動態の制御(特にエンドソーム脱出過程)が効率的な核酸導入に重要なことが示唆された。次に肝臓を実質細胞と非実質細胞に分離して細胞数あたりの遺伝子発現活性を調べたところ、非実質細胞は実質細胞に比べて約6倍活性が高く、非実質細胞選択的キャリアであることを明らかにした[Yamauchi J, Hayashi Y et al.Biol Pharm.Bull.(in press)]。次にApoB siRNAを封入したMENDを構築してApoB遺伝子のノックダウン効果を調べたところ、顕著な効果が認められなかった。そこで蛍光siRNA標識したMENDを投与した肝臓切片を顕微鏡観察したところ、非実質細胞に核酸が多く集積していた。一連の実験によりノックダウン効果が見られなかった原因が明らかとなった。これらの情報は実質標的型MENDの構築をする上で極めて重要な知見となった。 研究実施計画通りに進まないことが予想されたので、本来平成22年度の研究計画である2型糖尿病標的遺伝子の探索に取り組むことにした。2型糖尿病標的遺伝子の探索に関しては9遺伝子をマイクロアレイ解析及びRT-PCR実験によって抽出した。これら遺伝子群は全て病態マウスで発現亢進しており、その全てが新規遺伝子であった。また病態ラットに関しても同様に候補遺伝子の抽出に成功した[Hayashi Y et al.Biol Pharm Bull.(in press)]。
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