研究概要 |
本研究において,高周波磁界を介したエネルギー伝送により,感温磁性体と金属環を組み合わせた構成である発熱体を励磁加温する方法を採用している.本発熱体は感温磁性体のキュリー温度を利用した温度制御と金属環の短絡電流損による高発熱を実現することが可能である.今回は,針状発熱体に着目し,擬似生体中における温度分布について検討した.同時に高周波磁界を発生させる励磁装置についても検討を行った. 前者の検討事項としては,擬似生体中における温度分布の検討と温度分布解析シミュレーションプログラムを構築することである.まず,擬似生体中における温度分布については,擬似生体として寒天を利用した.磁界強度を変化させて測定を行ったところ,発熱体の発熱量と温度分布の関係を確認することができた.さらに,発熱体を複数配置させたときの温度分布から,発熱体の効果的な配置方法を確認することができ,大きさの判明している癌に対して適切な治療プロトコルを提案することが可能になる.次に,温度分布解析シミュレーションプログラムの構築に関して検討を行った.開発したプログラムはFDTD法を利用して構築しており,二次元の温度分布を解析することが可能である.本プログラムより,擬似生体中における温度分布について解析を行った結果,測定結果との良好な一致が確認できた.さらに,プログラム中に血流項を盛り込むことで,血流による温度分布の変化を捉えることが可能になった. 続いて,励磁装置に関して検討を行った.今回使用している針状の発熱体の発熱は磁界の向きに対して異方性を有している.そこで,二つのコイルを別々の周波数で駆動することでできる合成磁界を利用することで,発熱体とコイルの位置関係によらず発熱させることが可能になり,実験で確認することができた.本方式を用いれば,励磁装置と発熱体の位置関係を気にすることなく治療を行うことが可能になる.
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