多数の粒子を用いた物理シミュレーションは、液体や分子モデルなどの詳細な挙動を再現でき、広く利用されている。しかし対象物の境界面(液面や分子の等電位面など)を表示するには、従来法では計算時間が膨大である。そこで、比較的安価に入手できるグラフィクスハードウェア(GPU)を用いて、即座に境界面を表示する手法を開発しできた。具体的には、これまで開発してきた手法を論文としてまとめ、国内シンポジウムにて発表した。この手法はメタボールと呼ばれる、粒子の集合から構成される陰関数曲面を対象としたもので、GPUを用いて高速に描画を行う。視界を表す台形(視錐台と呼ぶ)を分割し、分割された台(セルと呼ぶ)がメタボールと交差あるいはメタボールを内包するかを検査する。これにより、メクボールの存在する範囲を特定する。この処理は視錐台のボクセル分割によって効率的に実現できる。メタボールと交差あるいはメタボールを内包するセルについてのみ、GPU上のメモリ(テクスチャメモリ)を確保し、メタボールの密度値を記憶する。等値面は記憶された密度値を補間し、密度値が閾値を超えているかどうかを判定することで抽出される。発表後の改良により、「100万オーダーの粒子からなる曲面を、対話的な速度で描画する」という当初の目標はほぼ達成できている。この手法の改良をさらに進めることで、科学技術分野やエンターテイメント分野における強力な可視化ツールとして供することができるものと思われる。
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