研究概要 |
本年度は,(1)昨年度開発したファイバー状のハイドロゲル材料の更なる機能化を図り,医学的応用を行うとともに,(2)他の非球形ハイドロゲル材料として,毛糸玉状ハイドロゲル粒子の作製を行い,さらに(3)モールディングを利用した微細加工ハイドロゲル基材の作製と応用を行った。(1)に関しては,初年度に開発した異方的ハイドロゲルファイバーの更なる発展として,断面が組成の異なる複数の部分によって構成されるアルギン酸Caファイバーを作製するための新規垂直型ノズルアレイ構造を提案し,細胞の成長方向制御および神経細胞のネットワーク形成に成功した。また,東京女子医科大学のグループと共同で,アルギン酸Baファイバーを用いたプライマリ肝細胞と繊維芽細胞のサンドイッチ近接共培養系の構築を行い,肝細胞の長期機能維持を試みた。今後は細胞機能のより長期にわたる維持を目的とした新規システムの開発を行う。(2)に関しては,直線状ハイドロゲル材料を,部分的にゲル化した時点で断片化し,液滴中に折りたたむことによって毛糸玉状のハイドロゲル粒子を作製する新規手法を提案し細胞の固定化担体としての応用可能性を実証することができた。さらに(3)に関しては,ハイドロゲルによって構成される微細構造・プレート構造・流路構造を簡便に作製するためのモールディング手法の開発を行った。微細加工によって作製した鋳型を用いることで,数十マイクロメートル程度の凹凸構造を有するゲル基材を作製し,それらを化学的に接着する新規手法を開発した。また,応用として微細なウェル構造を利用した肝細胞スフェロイドの形成に成功した。今後は,他の細胞系への応用および各材料の複合化を目指す。
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