研究概要 |
発達初期の予測的行為として乳児の視線行動を観察ターゲットに設定し,予測場面における視線行動の動的変化の計測をおこなった.予測場面として,経験の記憶,ワーキングメモリ,抑制機能を必要とする視覚的な場面(視線版A-not-B課題)を用い,リアルタイム計測の可能なアイトラッカーを用いて視線行動を計測した,計測は,ウプサラ大学(スウェーデン)にておこなった.対象月齢は,生後10ヶ月児,18ヶ月児であった.対象物が2つの遮蔽物(AおよびB)の影に隠れた際,対象物がどちらの遮蔽物に隠れたかに関する予測を視線追跡によって計測した結果,生後10ヶ月児は,隠れた直後には正しく予測が可能であるが,視覚的な干渉があった場合,正しい予測が妨害されることが明らかになった.一方,18ヶ月児は,10ヶ月児に比べて長期間,正しい予測が持続すること,また視覚的な干渉に妨害されないことが示された.本研究では,継時的な計測が可能であるアイトラッカーを用いることにより,乳児の視線移動の時系列的な変化を追うことができ,記憶や予測のダイナミクスな変遷を捉えることができた.これらのデータに基づき,投稿論文を作成中である.さらに,発達的な変化を明確に検討するために,中間の月齢である生後12ヶ月児の計測を実施中である. また,乳児の視線を用いたリアルタイムフィードバックシステムの開発に向けて,乳児の視線計測の経験が豊富な国内外の研究者と議論をおこない,次年度に予定しているシステム開発の方針を立てることができた.
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