研究概要 |
触知覚の非線形性は,ヒト固有の巧みな触覚センシング能力の要因とも考えられ,その解明は生理学的な観点から興味深いばかりでなく,力触覚提示装置などの開発に際しても重要な基礎データを提供できる可能性を持つ.本研究は,触知覚に影響を及ぼす力学的要因のモデル化と定量評価を目的とし,数理モデルを構築するとともに,得られた知見を力触覚提示装置へ展開する 21年度は,指先の数理モデルを構築し,様々な接触条件と知覚との関係について力学的解釈を試みた.そこで22年度は,前述の数理モデルを拡張して再構築するとともに,得られた知見を力触覚提示装置へと展開した。新たに構築した数理モデルは,無毛皮膚と機械受容器に関するもので,解剖学的データと材料的特性に基づく動特性の簡略化モデルである.力触覚提示装置は,構築した数理モデルに基づき提示情報を調整するもので,面型とジョイスティック型の二種を構築した.面型の装置では,指先との動的接触状態を考慮した接触面のインピーダンス調整法について検討した.また,ジョイスティック型の装置では,操作者へ伝搬される駆動系振動に関し,ユーザビリティ向上の観点から,把持力の変動による振動感覚閾値の変化に関して検証した.さらに,発展的課題として,ヒトの制御系との統合による能動触原理に関して,タブレットPCの操作タスクを例に分析を進めている 本研究は,触知覚の基礎原理を力学的観点から分析し,定量的解釈を得る目的がある.ただし,これまでの成果は,研究遂行に応じて心理物理実験などを取り入れており,厳密な意味での力学的な定量評価指標とはなり得ないと考える.一方で,ある種の定性的な解釈を含みながらも,各種の力触覚提示装置の機能評価に際して評価基準を策定可能であることが確認されており,本基準に基づく相対的評価を可能とする.以上より,幾つかの課題を新たに提起するとともに,本研究計画は達成されたと結論づける
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