平成22年度は、前年度に初期検討を終えたポテンシャルを用いた経路制御方式の応用課題を中心に検討を実施した。ポテンシャル経路制御は、物理学や化学、および、生物学におけるポテンシャルの概念に着想を得た経路制御方式である。本課題では、データの宛先ノードのポテンシャル値が最も低くなるように自己組織的にポテンシャルの勾配場を形成する。具体的には、隣接ノード間でポテンシャル値を交換し、それぞれのノードは隣接ノードの中で最も低いポテンシャル値をもとに自身のポテンシャル値を計算する。このように、データの宛先ノードのポテンシャル値が最も低くなるように勾配場を形成する。それぞれのノードは、隣接ノードからポテンシャルが最も低いノードにデータを転送する。しかし、この方法では、トポロジが変化した場合に、局所的にポテンシャルが最小となるノードが発生する。これにより、そのノードにデータが集中し、データが宛先ノードに到達するまでの遅延が長くなるという課題があった。そこで、自然界では、様々な勾配場が重畳されてポテンシャル場が形成されるというアナロジーにもとづき、トポロジの変化を考慮した勾配場と、上述のデータ転送のための勾配場を重畳させることで、トポロジの変化がある場合でも低遅延でデータ転送が可能なポテンシャル経路制御を実現した。シミュレーション評価により、提案手法を用いることで、トポロジ'が規則的に変化する場合は、従来手法よりも低遅延でデータ転送を実現できることを明らかにした。
|