研究概要 |
本研究でほ,動的なネットワークを対象に,ネットワークの状況変化に対して出力を変化させていくという自律適応性と,ネットワークの変化が頻発しても安定した出力をユーザに提供するという出力安定性の2つの性質を同時に満たす分散アルゴリズムの設計手法を確立することを目標としている.本研究の基本的なアイデアは,優れた自律適応性を有する自己安定プロトコルに,安定した出力を提供する機能を付加する手法を確立することにより,自律適応性と出力安定性を同時に保障する分散アルゴリズムを実現するというものである. 本年度は無線アドホックネットワークの運用に必要不可欠な問題に対し,自律適応性と安定性を備えた分散アルゴリズムを設計する(i)発見的な手法,(ii)(i)で得られた結果をもとにした,統一的な手法を得るのが目標である. 本年度は特に,モバイルアドホックネットワーク上での生成木作成問題とクラスタリング問題に着目し,(i)の発貝的な手法を確立した.生成木作成問題については,トポロジ変化に対応するための出力の変化数を最小化することにより安定性を実現する手法を示した.クラスタリング問題については,ノードの移動特性を考慮し,安定なクラスタリング結果を提供する手法を確立した.さらに,オーバレイネットワーク上で通信量を抑制しながら,安定した通信を保証する分散アルゴリズムを提案した.高信頼なオーバレイネットワークを構築できれば,大規模なネットワークを効率よく管理することが可能となる. また,これらの成果をもとに,(ii)の統一的な手法を検討し,既に結果を得ている.この成果は平成22年度中に論文誌に投稿する予定である. 本年度の研究は研究実施計画通りに進行しており,これらの結果をもとに無線アドホックネットワーク等を対象とした大規模なシミュレーション実験を行う準備を進めている.
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