研究概要 |
本研究では,運動課題を行うユーザーの状態に応じて,適応的に支援方法を学習する運動・運動学習支援システムの開発を目指している.そのためには,ユーザーがどのような運動を行おうとしているかの意図予測と,その運動を支援して実現させるという2つの課題を解決する必要がある.21年度は効率的な支援学習を実現させるために,学習パラメータや探索空間の削減に関する問題に取り組んだ. 筆者は以前から,モーション情報・EMG (electromyogram:筋電図)の情報から,ユーザーが発揮した手先のカベクトルの推定を行ってきた.electro-mechanical delay (EMD)と呼ばれるEMGが観測されてから筋肉の収縮が起こるまでの時間遅れに対処(適したフィルタを学習)するため,従来は力推定器にEMGのtapped delay-lineを使用してきたが,この手法では力推定器のパラメータが膨大になるという問題があった.本課題における意図予測,運動支援学習の際にも,推定器のパラメータの数が問題となることが予想されたため,適切なEMG処理方法を確立しておく必要があった.この問題に対処するため,EMG-to-activationモデルと呼ばれるEMDを考慮したEMG処理方法を導入した.これにより,delay-lineに比べ大幅に推定器のパラメータを削減することができた.さらに,モーション・EMGといったユーザーの生体情報に応じて機械が方策(支援)を変化させる強化学習に新しい推定器を適用し,パラメータ削減により高速な学習が実現されることを確認した. また,支援学習では効率良く探索空間を削減することが必要である.この目的のために,シナジー(筋活動の基本パターン)という考え方を導入する.21年度はシナジー抽出アルゴリズムの実装を行った.
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