研究概要 |
細胞が材料内部まで遊走するのが容易で,さらに適切な部位に生理活性分子を送達し適切な期間それらを徐放可能な薬物徐放能を有し,組織再生と共に分解・吸収される足場材料は,組織再生において有用な材料となり得る。本研究では,埋入時に周辺組織の再生を誘導するだけではなく,骨形成誘起能を有しナノサイズでハイブリッド化した有機-無機複合体と細胞を複合化したミクロサイズ粒子およびカプセルを作製し,材料内部からの組織再生と材料の分解性を制御し,新規な注入型骨誘導材料を創製する。その粒子・カプセルが注入された欠損部で集積して3次元体を構築すると共に,この粒子・カプセルの分解性を内部の細胞増殖速度に伴って制御すれば,最終的に複合体と細胞が完全に置換し,欠損部に3次元的に組織が再生されると期待される。生分解性材料のキトサンおよび無機化合物を出発原料とするゾル溶液を各種溶液に滴下することによって,粒子およびカプセルを創製した。作製した複合体粒子は,作製時の組成および温度によって,孔径,分解性を制御可能であった。また,出発組成にカルシウム源を導入し,リン酸溶液に浸漬すると,その表面にヒドロキシアパタイトを形成した。析出したアパタイト皮膜により,粒子の機械的強度が向上し,また高いタンパク質吸着能を示した。一方,カプセルは無機成分の複合化によって,膜の機械的強度が向上し,溶液中で破損することなく長期的にその形態を保持することが可能であった。またカプセル内部に包括した種々のタンパク質の徐放能を修飾する無機成分の割合によって制御可能であった。また得られたカプセルから溶出する各成分は,骨芽細胞様細胞に対して毒性は示さなかった。
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