本研究は東アジアにおける近年の国際的な環境教育の潮流を見据え、特に地球温暖化対策との関係から注目されている「エネルギー環境教育」(具体的には環境政策とエネルギー政策等)と、「持続可能な社会」を構築するために講じられている諸政策の関係性に着目し、東アジアにおける「持続可能な開発のための教育」(ESD)に関わる諸政策の全体像を明らかにすることを目的としている。 平成22年度(最終年)は、初年度に再構築を行った基礎資料に基づき、日本・台湾・中国における「エネルギー環境教育」とESDに関わる政策がどのような関係性を持っているのかについて、明らかにしていった。また、これと並行し中国および台湾において環境教育研究者へのヒアリング調査を行ったほか、実際に「エネルギー環境教育」を実践している公立小学校やその支援をしているNGOなどを訪問し、現状と問題点についてヒアリング調査を行った。 本研究を通じ、日本・台湾・中国においては、ESD・環境教育・エネルギー教育(エネルギー環境教育)のそれぞれについて、政策面からの取り組みは多くあるものの、三者間の整合性については非常に曖昧であると言わざるを得ない状況にあることが明らかになった。特に地球温暖化対策について、台湾と中国は国際的にCO2削減義務を負っていないため、関連する政策や関連活動は努力目標としての意味合いが大きい。そのため、日本ほど積極的な政策展開が見られないというのが現状であった。また、今回の研究を通じて、日本・台湾・中国の研究者ネットワーク構築は一定の成果をあげることができた。今後はこの研究者ネットワークを通じて、東アジア地域全体のESD・環境教育・エネルギー教育の研究体制を確立していきたい。
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