研究概要 |
小児版・作業に関する自己評価(COSA)はアメリカで開発された,日常的活動についての子ども自身の作業有能性と価値というQOLに関連した認識を捉えることができる評価法である.評価実施後の面接を通して,発達障害を持つクライアントとセラピストの共通した目標設定と介入計画をもたらすクライアント中心の評価法であり,効果測定にも使用可能なものである.COSAの日本語訳に関しては,筆者らの先行研究により,すでに言語的妥当性が確認されている.COSAの日本版を完成させるために356名の健常児にCOSAを実施し,データを収集した.実施した調査はCOSA,小学生版QOL尺度,児童版自己効力感尺度,PedsQLの4種類であった.COSAは2週間の間をあけて2回行った.有能性尺度と価値(重要性)尺度の4段階の評定をそれぞれ1点,2点,3点,4点として集計し,統計量を算出し,COSAの検査-再検査信頼性と内的整合性,因子分析による構成概念妥当性を検討した、 主因子法・プロマツクス回転による探索的因子分析から,日本版COSAは「挑戦的作業」「動機づけられた作業」「日常生活課題」「期待された課題」の4因子構造を持つことがわかり,これらの因子構造は作業の分類と関連すると考えられた. 作業有能性と価値の検査-再検査相関はそれぞれ,r=0.78とr=0.76であり,1%水準で有意な相関が認められた.また,内部一貫性を示すCronbachのα係数は,それぞれα=0.86とα=0.92であった.以上の結果より,日本語に訳されたCOSAは高い再検査信頼性と構成概念妥当性を持つと考えられ,COSAの日本での適応可能性が見出された.わが国の発達障害作業療法領域において,クライアント中心の評価とそれに基づく効果的介人は重要な課題であり,その実践への手掛かりとなる意味で本研究は非常に意義深いと考える.
|