本年は調査紙調査ならびにネットワークにおける言説の収集を行った。調査紙調査では、文部科学省再生医療の実現化プロジェクトにおいてiPS細胞研究推進の4大拠点のひとつとして設定される東京大学医科学研究所、および慶応義塾大学医学部に所属する研究者らに対する調査を行った。また、対照となる公衆には慶應義塾大学および中央大学、明治大学の文科系学生に対する調査を行った。また海外における幹細胞研究の現状を調査するため、2010年3月8日~13日の日程でイギリスにおける現地調査を行った。イギリスではイギリス幹細胞バンク・オペレーションマネージャーであるチャールズ・ハント博士に対して幹細胞バンクの運用の実態の聞き取り調査を行った。また、イギリスの公衆における幹細胞認識に対して、科学者サイドからはロンドン大キングスカレッジのステファン・ミンガー博士に、社会学的な見地から社会学的な見地からロンドン大学スクールオブエコノミクス校のサラ・フランクリン教授にそれぞれインタビューを行った。これらの調査の中で、やはり科学者と公衆の間では細胞の認識に差があることが浮かび上がった。なかでも生殖系の細胞へと分化させること、あるいは細胞のバンク化という問題に関して、研究者においては肯定的な考えが多いのに対し、公衆では否定的な意見が多く見られる。さらに調査を行い、傾向の分析を行う必要があると考えられる。
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