加齢に伴い筋量が減少することが知られている。この加齢性筋肉減弱症(サルコペニア)の発症原因の一つとしたとして、骨格筋の組織幹細胞である筋サテライト細胞の増殖能の低下が起因している可能性が示唆されている。これまで、運動・トレーニングが筋サテライト細胞数を増加させることがよく知られており、増殖能への影響が示唆されている。しかしながら、運動・トレーニングがどのようなメカニズムを介して、筋サテライト細胞数を増加させるかについては、明らかにされていない。本年度は、運動・トレーニングが筋サテライト細胞の増殖能を改善するメカニズムを明らかにするために、運動によって骨格筋から分泌されると予想される因子、インターロイキン6(IL-6)が筋サテライト細胞の増殖能に及ぼす影響について、培養実験系を用いて明らかにすることを目的とした。被験動物には、F344系の雄性ラット(10-13週齢、n=20)を用いた。各ラットの両脚より下肢骨格筋(ヒラメ筋、足底筋、腓腹筋、前頸骨筋、長指伸筋および大腿四頭筋)を摘出し、研究協力者の町田が既に若齢期および高齢期の筋サテライト細胞用に確立したプロトコール(2003)に従って初代培養を行った。筋サテライト細胞単離後、濃度の異なるIL-6を培地に添加し、BrdU法および細胞数によって増殖能を評価した。その結果、IL-6の濃度の違いにより、増殖能に違いが認められた。次年度は、今年度得られた結果がどのようなメカニズムを介して引き起こされたかを明らかにするために、IL-6によって活性化されると予測される細胞内情報伝達系とその標的遺伝子について、タンパク質およびmRNAレベルで検討する予定である。
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