研究概要 |
本研究の目的は,他動的足関節背屈装置を用いて遠心性収縮による筋損傷モデルラットを作製し,定量的に制御した伸張刺激が筋損傷からの回復を促進させるかどうかを,組織学的・生理学的面から明らかにすることである。平成21年度は,遠心性収縮による筋損傷モデルラットの作製,筋損傷と筋再生の組織学的評価方法の検討,等尺性収縮力(筋力)の測定方法の検討を行った。 筋損傷モデルラットの作製:一般的に,遠心性収縮による筋損傷の程度は,伸張する速度,収縮回数,運動範囲などにより変化すると言われている。そこで,最適な筋損傷モデルを作製するために,他動的足関節背屈装置と電気刺激装置を用いて,上記の条件を変えることにより,前脛骨筋にどの程度の筋損傷が生じるのかを,エバンスブルーを用いて評価した。その結果,条件を変えることにより,様々な程度の筋損傷を作製できるようになりつつある。 筋損傷と筋再生の組織学的評価方法の検討:developmental myosin heavy chainやMyoD, pax7, myogeninなどの筋再生に関わる分子を免疫染色法により同定できるようになった。 等尺性収縮力(筋力)の測定方法の検討:損傷した筋の筋力を経時的に評価するために,表面電極によって足関節背屈筋群への電気刺激を行い,足関節背屈トルクを測定するシステムを構築した。これまでに,神経に直接電気刺激し足関節背屈トルクを測定するシステムを確立していたが,それと同様に測定できるようになった。 今年度の結果から,どのような条件でどの程度筋損傷が生じるのかを明らかになり,筋損傷・筋再生の組織学的評価方法,等尺性収縮力の測定方法が確立された。今後は,定量的に筋損傷が生じるモデルラットを用いて,伸張刺激による筋損傷の回復促進効果を明らかにしていく必要があると考える。
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