研究概要 |
本研究では、水泳運動における上肢動作(以下:ストローク動作)について,ストローク技術の一つであるハイエルボ動作を対象とし,ハイエルボ動作と泳速との関係について検討するとともに、どのようにハイエルボ動作を行っているのか明らかにすることを目的とした。5名の男子水泳選手と5名の水泳の未熟な成人男性の計10名を対象とし、クロールによる25m全力泳中のストローク動作を2台の水中カメラにより同期撮影した。対象者の上肢の身体各部に貼付したマーカを手動ディジタイズして各マーカの3次元座標値を求め、ハイエルボ動作を定量的に評価するとともに、泳速を算出した。その結果,熟練者群と比べ、未熟練者群ではハイエルボ動作が行えていないことが定量的に示された。さらに、泳速とハイエルボ動作との間には有意な相関関係が認められたことから、泳速が高い対象者ほどハイエルボ動作が行えていることが示唆された。また、手部の入水からプルに至るまでのストローク動作中の肩関節に着目し、熟練者群と未熟練者群との角速度について比較・検討したところ、熟練者群では未熟練者群と比べて肩関節内旋方向の角速度が高いことが明らかとなった。したがって、熟練者は肩関節内旋運動を行りことにより、ハイエルボ動作を行うよりにしていると考えられる。しかしながら、本研究では熟練者群として、一般的な大学水泳選手を対象としていたため、トップレベルの選手について検討がなされていない。そのため、現在、よりハイレヴェルな泳者を対象として、分析を進めているところである。熟練度の高い泳者を対象とすることによって、泳力向上のためのストローク技術の解明につながることが期待される。
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