研究概要 |
本研究では、量子通信プロトコルの中でも特に制御付き量子テレポーテーションや秘密分散、データ秘匿について、純度が高い量子状態や大規模なエンタングルした状態を用いずに、より現実的な実装を理論提案する研究を行っている。今年度は、非古典的な相関の定量化の一手法を提案し、それが操作的な意味では、あるプロトコルにおいて、二者間で互いに予測できないデータの量を表していることを示した[A SaiToh, R Rahimi, and M Nakahara, arXiv : 0906.4187(quant-ph),査読中]。このプロトコルは、ディーラーがアリスとボブにデータを送るために、密度行列の各固有空間を利用する。密度行列が直積基底を持つ場合、すなわち古典的相関のみを持つ場合、アリスとボブは、互いに相手の部分空間での状態が持つ固有値が、たかだかヒルベルト空間の次元程度の回数試みれば当て推量で分かるので、データは安全でない。しかし、密度行列が非古典的相関を持つ場合、当て推量が多項式時間でできない場合が現れる。このとき、アリスとボブの両方または一方が、相手に対して秘匿できるデータを持つことになる。 量子通信理論と、量子系の部分系の間の相関の量子性の理論は一体として研究がなされてきた。このことは本研究にも当てはまる。我々は、節約指向の量子情報処理という観点から、非古典的相関の簡便な検出方法として、非古典的相関ウィットネスを発案した[R.Rahimi and A.SaiToh, arXiv : 0911.3460(quant ph),査読中]。これは、広く使われているエンタングルメントウィットネスに倣って定義したもので、非古典的相関の実験的な検出の簡素化に役立つものである。
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