本研究は、失語症者の言語データを詳細に記述するとともに、脳機能イメージングや脳波を用いて言語機能のネットワークを解明し、かつ言語聴覚療法に科学的根拠を提唱することを目指すものである。本年度は、fMRIを用いて仮名1文字からの語想起課題と文中の空欄に合う語を想起する文完成課題施行中の撮像を行った。対象は、健常者7名(右利き6名、左利き1名)である。方法は、言語性課題をブロックデザインで行った。解析にはSPM8を使用した。その結果、仮名1文字からの語想起課題では、左IFGに賦活が見られた。文完成課題では、左IFG(BA44、45)、左前頭前野に加え、7例中4例で右前頭前野、右44、45、右上側頭回で賦活が見られた。仮名一文字からの語想起は概ね先行研究の結果に一致する。これまでにカテゴリーからの語想起課題は音韻からの語想起よりも広範囲の部位が賦活することが指摘されている。本研究の結果から、文完成課題ではさらに広範囲で、多くの場合右半球も関与することが示唆された。失語症の回復過程には右半球の賦活が関与すると言われており、文完成課題を訓練に用いることは失語症回復に有効な課題であると思われる。
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