研究概要 |
本研究の目的は,パーキンソン病患者における足趾把持力と姿勢制御能力との関連性および足趾把持力の関連要因について検討することである。対象はパーキンソン病患者10名,健常高齢者10名とした。評価項目は足趾把持力,静的姿勢制御能力,外乱負荷に対する姿勢制御能力,前後方向への随意的な重心移動能力,足部柔軟性とした。静的姿勢制御能力に関しては,重心動揺計により総軌跡長,矩形面積,外周面積,前後左右方向の重心動揺分散,足長に対する足圧中心の前後方向の位置を評価した。外乱負荷は外乱負荷発生装置により,振幅9cm,加速度は2cm/sec^2にて前後にランダムに与えた。外乱負荷応答に対する姿勢制御能力は,外乱を与えた後の足圧中心の最初の位置からの移動量,足圧中心の移動が最大に達するまでの時間と外乱負荷発生後に足圧中心の移動が最大に達するまでの最大速度とした。前後方向の随意的な重心移動能力は,重心動揺計上における立位をとり,最大限前方あるいは後方に重心を移動させ,足圧中心の最初の位置から移動距離(前方,後方)を算出した。パーキンソン病患者の足趾把持力,足部柔軟性は,健常高齢者と比較して有意に低下していた。パーキンソン病患者の総軌跡長,矩形面積は健常高齢者と比較して有意に高い値を示した。パーキンソン病患者において足趾把持力は前方の安定性限界と有意な正の相関関係がみとめられたが,その他の姿勢制御の関する項目とは有意な相関関係が認められなかった。また,パーキンソン病患者においてのみ足趾把持力は,足部柔軟性と有意な高い正の相関関係がみとめられた。パーキンソン病患者において足趾把持力低下は随意的に前方へ重心移動する際の姿勢制御能力の低下に関与し,パーキンソン病患者における足趾把持力低下には足部柔軟性の低下が関与することが示唆された。
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