研究概要 |
近年、Sarcopenic Obesityという概念が提唱され始め、骨格筋萎縮と肥満の相互作用の問題が指摘されている。骨格筋は、筋力発揮だけでなく、代謝にも強く関係する器官であり、骨格筋の量と質の維持向上は極めて重要な課題である。特に高齢者や肥満者では画像法などで推定した骨格筋量が真の筋力を反映していないため、筋の質も考慮した新しいSarcopeniaの基準が必要である。申請者が研究している部位別多周波生体電気インピーダンス分光法(Segmental Bioelectrical Impedance Spectroscopy, S-BIS)は、筋細胞膜の電気的な性質および骨格筋組織中の各種要素の電気特性の差異を利用し、骨格筋内組成を推定できる可能性がある。昨年度に安定同位体・臭化ナトリウム希釈法を用いて確立したS-BIS法を用いて、高齢者の筋力と筋細胞量との関係を明らかにした(Yamada et al.2010)。この論文は、アメリカ老年学会の65周年記念論文賞を受賞した。また、様々な年齢・体組成・身体活動レベルを有する40名の日本人男女に適用し、その妥当性を検証した。超音波画像法やMRI法との妥当性も検証した。さらに同一被験者の縦断変化について、要支援・要介護高齢者の運動介入の効果を超音波画像法や筋力測定とともにS-BIS法で評価し、その有用性を明らかにした。S-BISは、非侵襲的で、特別な技術・資格が必要なく、どこででも測定でき、装置が比較的安価である。そのため、特定健診・特定保健指導や介護予防で教室広く利用することができる。さらに、ベッドサイドにおいても、毎日の測定が可能で、リハビリテーションの効果の検証などにも応用できる可能性がある。
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