研究概要 |
本研究では,プログラムソースコードに見られる作成者固有の書き方の癖を作成者特徴として抽出し,「記述スタイルモデル」という隠れマルコフモデルをベースとした確率モデルに学習させ,これを用いて学生が最終課題ソースコードを自らの手で作成した可能性を測定するという手法を提案した.本手法を既存手法と併用することで,これまでに問題視されてきた偶然の一致の誤検出のリスクを軽減することが期待できる.本手法によりプログラミング授業における教員の肉体的・精神的負担を軽減することで,間接的にプログラミング授業の質を向上させることを目的としている.初年度である平成21年度には次のことを行った.(1)本手法のアルゴリズムの一部である,記述スタイルモデルの最終的な出力の算出について改良を行った.(2)より詳細な記述スタイルの抽出を行うため,記述スタイルモデルの構造について再検討し,新たに「前後方記述スタイルモデル」を開発した.(3)これらの改良を元にシステムを開発し,盗用のない240個のソースコードを用いて評価実験を行い,性能の向上を確認した.(4)既存手法の盗用発見システムと本手法の盗用発見システムを併用について実験を行い,既存システムの出力結果について,誤検出であるか否かを本手法により評価した.(5)上記について国内外の学会で報告を行った.また,授業課題ソースコードの盗用発見に関する諸研究における本研究の位置づけと本手法の詳細なアルゴリズムについてまとめた論文を発表した.(6)さらに,本学の学生約100名に対し匿名アンケートを実施し,本手法の盗用発見アプローチが教員のみでなく学生の精神的負担を軽減する可能性についても調査した.
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