本年度は、メダカ骨格筋のプロテオミクス解析ならびに組織学的解析、メダカ科セイルフィン・モーリーを用いた筋電図解析を行った。プロテオミクス解析では、レーザーマイクロダイセクション装置(Leica LMD6000)を用いて、凍結切片よりメダカの速筋・遅筋を別々に採取することを試みた。取得した筋試料よりタンパク質を抽出し、LC-MS装置(AMR)を用いて、解析を行った。検出されたピークをMS-MSモードにて分析し、メダカcDNAデータベースに対応させたMASCOTを利用しピークの同定を試みたところ、アクチン、パラアルブミン、ミオシン、トロポミオシンなどの、筋構成タンパク質が検出された。筋萎縮を誘発したメダカ筋試料の分析も行い、ほぼ同じタンパク質群が検出された。組織学的解析では、メダカ骨格筋より単一筋線維を単離し、ヘキストによる筋核染色ならびにバンガロトキシンによる神経筋接合部染色を行った。メダカ骨格筋の形態的特徴は、ほぼ哺乳動物と共通していることが判明した。また、メダカ骨格筋活動の予測を行うためメダカ科セイルフィン・モーリーを用いて筋電図測定も行った。ヒレの動きを支配している左右の骨格筋にコンスタンタン線を埋め込み水中で測定を試みた。水中でも十分に測定可能であることが判明したが、有線で行うと魚の動きを阻害すること・激しい動きの際は電極線が絡まってしまうことの2点が問題点として懸念され、今後測定方法に改良が必要である。これら本年度の結果より、メダカ骨格筋のタンパク質組成ならびに形態学的特徴は、げっ歯類やヒトと非常に相関があり一般的な骨格筋解析技術で十分に分析可能であることが判明した。また、筋電図測定も可能であることから筋萎縮メカニズムと筋活動を総合的に評価できることも可能である。これらの結果は、メダカ骨格筋がヒトのモデルとして用いれる可能性が十分にあることを示唆していると思われる。
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