生きている有機体は化学反応連鎖が作り出す高度なネットワークにより、複雑な挙動を発揮する。この生体内化学反応システムの概念はまさに生物学の核心であるが、非生物として人工的にこのような構造を作り出すことは極めて難しい。ここではそのよう生化学反応システムを任意に構成できるような最小ユニットを作製するために分子生物学の生体外化学反応の標準的な手法を用いて効率的な化学反応振動子を組み立てた。化学反応振動子に対応するネットワークをもつように、20個程度の塩基からなるDNA鋳型をエンコードし、そしてDNA合成量の発振現象を得た。この結果は、簡便なモジュールの連鎖反応を用いることで、人工的に生体の複雑な挙動を論理的かつ予測可能な形で再現できる可能性があること示している。
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