本研究は、ラボオンチップ型の新規測定セルを開発し、独自の1分子観測法とその時系列情報の解析法を確立することで、測定の汎用性と1分子レベルの検出感度を併せ持つ全く新しい生体分子相互作用測定法(分子トラッキング計測法)を構築することを目的として実施した。初年度は、これまでの核酸分解酵素反応の研究成果をベースとしながら、分子トラッキング計測法の汎用化に向けた測定の詳細項目を検証した。測定の操作可能性に関わる介入実験やサンプルの統計的関連性に関わる実験のデータを新たに取得した結果、サンプルの選択・調製→実験プロセスの実行→解析・評価までの流れを確立することに成功した。これにより、本計測手法がマイクロチャネル流れ(マイクロ流体)によってタンパク質-DNA間相互作用を1分子レベルで制御・解析可能な世界初の機能を有することを実証した。さらに、マイクロ流体制御下における分子間相互作用の検出の再現性に確証を得たことから、レーザートラップや微小溶液チャンバーを用いる従来の1分子計測法に比べてより生体内環境に近い自然な分子状態の履歴をリアルタイムに追跡し、同時に多数の標本を採取・回収可能なマルチ計測の実現可能性が強められた。また、次年度に予定しているタンパク質間相互作用の計測に関連して、反応過程を追跡する指標として有効な蛍光色素の検証も完了した。本研究成果は国内・海外での学術会議において口頭発表の形で公表を行い、研究の過程で開発したデバイスの製造方法は特許として出願を行った。
|