研究概要 |
本研究はラボオンチップ型の新規測定セルを開発し、独自の1分茅観測法とその時系列情報の解析法を確立することで測定の汎用性と1分子レベルの検出感度を併せ持つ全く新しい生体分子相互作用測定法(分子トラッキング計測法)を構築することを目的として実施した。今年度(H22年度)は初年度(H21年度)に検証した実験プロセスをタンパク質相互作用計測に適用した応用研究を試みた。初年度の時点で反応過程を追跡する指標として有効な蛍光色素の検証を完了しており、今年度はプロテアーゼを対象とするタンパク質相互作用の状態変化をリアルタイムに追跡する実験を実施し、1分子レベルの相互作用の所要時間や反応速度定数に関するデータを取得した。本研究成果によって確立された計測技術は各種疾病に関連する細胞内プロセスを解析する新規ツールとして非常に有望視されており、例えば細胞の情報や命令をより効果的に伝達するために一時的に結合して大きな複合体を作るタンパク質グループの性質や、他のタンパク質を切断するプロテアーゼが細胞から切断機能を実行する命令を受ける仕組みを解明する研究が期待できる。この成果により二本の雑誌掲載論文が採択され、特にマイクロ・ナノテクノロジーの基礎からバイオ応用までの発表が寄せられる世界最大規模で最高権威の国際会議μTAS2010での発表は、約1,100件の発表申込中の査読順位上位約5%以内にランクされ、口頭発表に選ばれた。また、慶大・早大・東工大・東大の四大学が未開拓領域の工学研究を促進する目的で発足させたコンソーシアム(共同事業体)が主催するシンポジウムにおいて、本件に関わる招待講演が行われた。
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