本研究ではサブ波長格子に機械的変位を加えることにより、反射・透過光の波長を変調することを目的とし、本年度は格子を駆動するためのMEMSアクチュエータの構造設計および解析、サブ波長格子の光学設計、デバイス作製のための要素技術の基礎的検討を行った。 可動サブ波長格子における、アクチュエータ構造の解析を有限要素法により行い、共振周波数は200kHz程度が得られた。これは応答速度にすると数10μsとなり、液晶と比較し2桁程度上回りディスプレー素子として十分な応答速度である。また、駆動電圧は数V程度で動作する結果が得られ、低消費電力化の可能性が示せた。 サブ波長格子は、格子幅と格子間のギャップを変更することにより、透過・反射波長を任意に変更することができることが知られている。本研究では、格子幅を固定しギャップのみを静電引力によって変化させることにより透過・反射光スペクトルを可変とすることを検討している。厳密結合波(RCWA)法を用いて、ギャップを変更した際の透過光スペクトルを解析したところ、120nmの微小な機械変位によって波長が青色から赤色側ヘシフトする結果が得られた。これより、3原色以外の中間色も表現することができることを確認した。 デバイスの作製には、本学でCMOS集積回路作製に実績のある設備を利用し、シリコン基板上へのサブ波長構造のパターニングと、格子を可動構造とするための犠牲層エッチング技術の開発を行った。シリコン層への構造形成後に構造色の発生を確認し、CMOS集積回路プロセスに準拠した方法での製作に成功した。
|