紫外線誘発DNA損傷を修復するヌクレオチド除去修復(NER)機構に関与する新たな因子を同定するため、NER活性を指標としたsiRNAライブラリースクリーニングを行った。NERには、ゲノム全体で働くNER (Global Genome Repair ; GG-NER)と転写と共役して起こるNER (Transcription Coupled Repair ; TC-NER)の2つの経路がある。それぞれの活性はDNA修復合成(UDS)量とRNA合成のリカバリー(RRS)量を測定する事で評価が可能である。放射性標識ヌクレオシドを利用したオートラジオグラフィーによる従来の測定法は、非常に煩雑でスクリーニングには不向きであったため、より簡便な方法を検討した。その結果、チミジン誘導体であるエチニルデオキシウリジン(EdU)及びエチニルウリジン(EU)を紫外線照射後に細胞に取り込ませ、蛍光色素で標識し、その蛍光をIn Cell Analyzerで自動計測することにより、短時間での評価が可能となった。さらに、マルチプレートを利用する事で、多数のサンプルの同時比較が実現し、よりスクリーニングに適したUDS及びRRS測定技術が確立された。この手法は、NERに欠損あるいは異常のある色素性乾皮症やコケイン症候群患者の診断にも応用が可能であり、非常に高い精度を持つ事が確認された。これらの測定法を用いて、核酸結合タンパク310遺伝子とライゲース949遺伝子のsiRNAライブラリースクリーニングを行ったところ、UDSあるいはRRS活性に変化をもたらす数十個の因子が特定された。
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