研究概要 |
配送計画問題は,様々な制約条件の下で,複数の車両を用いて全ての客をちょうど一回ずつ訪問するような経路の中で,コストが最小のものを求める問題である.これは代表的な組合せ最適化問題の一つであり,また非常に実用性のある問題である.しかし,配送計画問題はNP困難であることが知られており,与えられる問題例に対して厳密な最適解を求めることは現実的に極めて困難であると考えられている.そのような問題に対する現実的妥協策として近似解法の研究が重要である.近似解法の設計において,proximate optimality principle(良い解同士は似通った構造を持っている)という概念が知られている.本研究では,良い解同士における同一構造に着目し,大規模な問題例でも現実的な時間で高品質な解を求める探索法の開発を目指す. 本年度は,同一構造をグラフのマッチングを用いて表現する手法を試みた.配送計画問題の良い解の中では,ほぼ同じ訪問順序で客を巡回することが頻繁に見受けられる.そこで,そのような良い解において客の訪問順序で頻繁に用いられている枝を保存するように,マッチングを用いて問題を縮小し探索を行う手法を検討した.また,同様の手法をグラフ分割問題に適用した.グラフ分割問題は,グラフの節点集合を容量が満たされるように部分集合に分割するときに,異なる部分集合をまたがる枝の数を最小化する問題である.配送計画問題においても客集合の(車両への)分割を行うという同じ問題構造があるため非常に関連のある問題で,またより単純な問題であるため,その探索効果をより顕著に観測することができた.
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