本研究は、世界的に急速な広がりを見せている安全なまちづくり活動である「セーフコミュニティ(SC)」の「住民主体の分野横断的な協働の仕組み」「体系的な取組の仕組み」「科学的な取組成果等の計測・評価の仕組み」に着目し、この取組を取り入れている国内外の事例を分析にすることによって、近年我が国においてもその必要性が認められてきている市町村レベルでの「ソーシャルガバナンス」の一モデルの提示することを試みている。2009年度の研究実績は以下の通りである。 1.文献研究による成果 まず、研究の核となる「ソーシャルガバナンス」については、それ以外にもローカルガバナンス、公民協働、連携など重複あるいは隣接している概念がいくつかあることから、これらの用語の整理を進めている。 また、国内及び国外(韓国、台湾、タイ等)でSC活動を導入しているコミュニティがSCとして認証をうけるために提出するSC認証申請書を分析し、それぞれのコミュニティにおける連携・協働の体制を整理した。 2.事例研究による成果 (1)取組体制 国内の事例としては、亀岡市、厚木市を中心に調査を行った。SCを推進するにあたって、全体的な運営体制とともに行政内、地域内における体制を分析した。また、海外については、申請書に記載されている組織体制を整理するとともに、台湾、タイの現地に赴き、現地で取組体制及び機能についてインタビューを行った。 (2)取組の成果測定・評価 取組の成果(SCに関しては安全・安心の向上)を測定する仕組みについては、主観的安全(安心)を中心にその変化についてモデル地区住民を対象としたアンケート調査を実施した。その結果、住民の地域での付き合いには2年間で大きな変化はみられなかったが、地域を安全だと実感している方が占める割合が高くなっていることが明らかになった。この傾向は、地域におけるつながりや関係が深いほど顕著であった。
|