研究概要 |
本研究では、南極海における海氷の生成と融解が大気-海洋間の二酸化炭素(CO_2)交換過程に及ぼす影響を定量的に評価し、季節海氷域が炭素循環に果たす役割を明らかにすることを目的としている。 上記目的を達成するため21年度の計画として、砕氷艦『新しらせ』を用い、2009年11月から2010年3月の第51次日本南極地域観測航海に参加し、南極海季節海氷域で氷上現場観測・船舶による海洋観測を実施した。22年度は、観測で採取したサンプルの物理、生物・化学分析、データ解析、論文執筆(Journal of Geophysical research, Antarctic Science, Journal of Glaciologyに投稿中:ホームページ参照)を実施した。 上記観測及び分析の結果 1.海氷上部に存在するスラッシュのCO_2濃度は、大気に対して未飽和となった。これは、スラッシュの温度上昇、塩分及び全炭酸濃度の減少より、主に希釈効果によるものと考えられる。同様な傾向は、CO_2以外のガス成分であるブロモホルムにおいても観測された。 2.大気-海洋間のCO_2放出量をチャンバー法を用い定量化した。全てのデータにおいて負の値となった。これは、スラッシュのCO_2濃度は、大気に対して未飽和であるため大気から海氷にCO_2が吸収されたためである。また、CO_2以外のガス成分である硫化ジメチル(DMS)についてもチャンバー法を用い定量化した。その結果、海氷表面からの大気への放出が確認された。 本観測データは、厳しい気候条件により、殆ど観測例がない南極海の海氷域の炭素循環についての有益なデータを提示する事が可能となる。本研究で得られた結果は、南極海の物質循環に関する将来予測研究の進展に大きく貢献できると考えられる。
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